今回は,私が日々追われているスマホアプリの通知や,リラックスがてら眺めていた動画,ただ楽しみが欲しくてやっていたゲームについて,「このままテクノロジーに”使われて”いて,人生本当に良いのか」と考えさせられた本をご紹介します。
ジョージタウン大学でコンピュータ・サイエンスを専門とする准教授のカル・ニューポート氏が書いた「デジタル・ミニマリスト」になります。
カル・ニューポート氏は,「DEEP WORK」という本を出版(本書は「大事なことに集中する−気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法」として日本語版も出版)し,その中で,大量の読者から「テクノロジーのストレスに悩まされているが,どうしたら良いか」という質問を受けたことがキッカケで本書を執筆したそうです。
現代病と言ってもよい「デジタル依存症」への一つの解として,本書は非常に役立つ内容が散りばめられていますので,同様の悩みを持つ方はぜひ参考にしていただければ幸いです。
「デジタル・ミニマリズム」の定義
まず本書の根底となる「デジタル・ミニマリズム」のについて、著者は以下のとおり”哲学”という形で定義しています。
自分が重きを置いていることがらにプラスになるか否かを基準に厳選した一握りのツールの最適化を図り,オンラインで費やす時間をそれだけに集中して,ほかのものは惜しまずに手放すようなテクノロジー利用の哲学。
デジタル・ミニマリスト, カル・ニューポート, P.48-49
以前,私なりに考えた「デジタル・ミニマリズム」についても書きましたので、そちらも読んでいただければさらに理解が進むかと思います。
スマホ依存
今や生活に不可欠となったスマートフォン。
初代iPhoneが発売された当初は「音楽が聞ける電話」という,それ以上でもそれ以下でもないモノでしたが,時代と共にアプリがサービスが充実し,気づいたら”ソレ”に時間を奪われることが多くなってしまい,健全な状態とは言えない世の中になりました。
これらのデジタルツールに時間が奪われるのは,決して私たちが愚かであったり,意志力の弱さが原因ではありません。これは,大量の投資をして,人間心理をよく理解しているプロフェッショナルたちが作り上げた巧妙なトリックが原因なのです。
「時間術大全」という本の著者であるジェイク・ナップ氏とジョン・ゼラツキー氏は元Google・元Youtubeの社員で、まさに”いかに人の注意を惹きつけるか”というプロダクトの構築に関わっており,本書でも同様のことが述べられています。
メールやゲーム、フェイスブック、ツイッター、インスタグラム、スナップチャットにハマるのは当然だ。なぜってその魅力はDNAに刻まれているのだから。
時間術大全, ジェイク・ナップ,ジョンゼラツキー, P.115
この”スマホ依存”とも呼べる状態がはびこる世の中は,「意図して作られたモノ」であるということを理解しておく必要があります。
デジタルミニマリズムの3大原則
さて,これからこの”スマホ依存”から抜け出し,自分を取り戻すために「デジタル・ミニマリズム」の哲学に触れていきますが,デジタル・ミニマリズムの有効性を知るためには,まず”3つの原則”を知ることが重要です。
原則1:あればあるほどコストがかかる
魅力的なデバイスを買い集めて周りにデバイスが散乱していたり,Apple Store・Google Playストアに並んでいる魅力的なアプリを次々にインストールし,,スマホ内が大量のアプリで埋め尽くされているという方も多いのではないでしょうか?(かくいう私自身がそうでした)
ですが,アプリの通知チェック(今はどんなアプリも通知を許可させようと必死に訴えてくる)しかり,アプリのアップデートなど,すべては私たちの貴重な”時間”や”注意”という「コスト」がかかるということを認識しなくてはなりません。
ソローは,自分の生活時間を計量可能な価値ある資産−私たちが持つうちでもっとも価値の高い資産といってもいい−として扱い,自分が時間を割くさまざまな活動に生活のどれほどを費やしているかをつねに意識しないさいと教えている。
デジタル・ミニマリスト, カル・ニューポート, P.64
デジタル・ミニマリストを目指すうえでは,いま自分が使っているデバイスやアプリ,サービスについて,そこから得られる利益が大きいか,はたまたコストの方が大きいかをしっかりと考える必要があります。
原則2:最適化が成功のカギ
原則1を踏まえ,そのデバイスやアプリ,サービスが「自分にとってコストを上回る利益が得られる!」と判断したとしても,それは最初の入口に過ぎません。
そこからさらに一歩を踏み込み,次は”どのように使うか”を考えましょう。参考までに,私の例を挙げたいと思います。
私は,「デジタル・ミニマリズムに関する情報をキャッチしたい」と思っています。
まず,デジタル・ミニマリズムに関する情報を取得するために“インターネットを活用する“のは「コスト<利益」の式が成り立つので,原則1はクリアとなります。
図書館や雑誌でミニマリスト関連書物はあるかもしれませんが,そこまで行く時間や費用などのコスト,情報がなかった時のリスクを考えれば,インターネットで調べる方が遥かに優位だからです。
そして,次に考えるべきことは”インターネットを活用して,どのように情報を収集するか“です。
単純にインターネットで検索して関連サイトを巡回するのも一つの手ではありますが,それだと時間がかかりますし,巡回中に出てくる余計な広告に惑わされて時間と集中力を奪われる可能性があります。
そこで取るべき方法として、自分が信頼しうるサイトやブログなどの更新情報のみを受け取るアプリやサービスを使うという結論に至りました。私は「Feedly」というRSSリーダーサービスを使って,特定のサイト・ブログからの更新情報のみを取得するようにしています。
原則3:自覚的であることが充実感につながる
最後の原則は,「テクノロジーから得られる利益を考えることは大事だが、自覚的に選択していることの方がより大事」だというものです。
原則1・2は、コストや利益を天秤にかけて“合理的に”テクノロジーを利用する内容でしたが、最終的には「自分が○○だと思うから、そのデバイスやアプリ・サービスは使わない」という“意図”の方が、より幸福度を上げてくれます。
デジタル・ミニマリズムの有効性を支えているのは,利用するツール類を意識的に選択する行為そのものが幸福感につながるという事実だ。そしてその幸福感はたいがい,排除したツール類から得られていたであろうメリットよりも大きい。
デジタル・ミニマリスト, カル・ニューポート, P.78
自分なりの信念や価値観をもって使用するテクノロジーを選択すると,”テクノロジーに支配されている自分“ではなく、”テクノロジーを支配している自分“に自信も持てるようになります。
デジタル・ミニマリズムの実践方法
さて,デジタル・ミニマリズムの原則についてある程度理解をしたところで,「では何をどのように実践していけば良いのか?」という内容に入っていきます。
本書では,デジタル・ミニマリズムの実践法として「デジタル片づけ」を勧めており,これは3つのステップで成り立ちます。
- テクノロジー利用のルール決め
- 30日間のテクノロジー休止
- テクノロジーの再導入
これは,著者が行った1,600人を超える集団実験で実際に成果が得られた手法です。一つずつ詳しく見ていきましょう。
STEP1. テクノロジー利用のルールを決める
まずは,STEP2のデジタル・デトックスに向けて「自分にとって必須ではないテクノロジー」を洗い出しましょう。
とりあえず最初は,「なんとなく必須だと思っているけど,自分の時間がだいぶ奪われているかも」ぐらいのフワッしたもので良いので,片っ端から洗い出してみましょう。(例:ストレス解消がてら見ている動画サービスやゲーム,情報収集のために定期的に見ているサイトなど)
そして,リストアップしたものから“必須ではないもの”を選んでいきます。”必須ではないもの“の基準について,本書ではこう書かれています。
一時的ではあっても排除してしまうと、仕事やプライベートな日常生活にデメリットや支障が生じると確実に予想できるテクノロジーだけは残し、ほかのものはすべて排除すべきである。
デジタル・ミニマリスト, カル・ニューポート, P.86
これら”必須ではないテクノロジーリスト“を洗い出したら,それを紙に書き出して見えるところに貼っておきましょう。
ここまでがSTEP1になります。
STEP2. 30日間のテクノロジー休止(リセット)
それでは,STEP1で選別した“必須ではないテクノロジー“を30日間使わないようにしましょう!
・・・と言われても,「すぐには辞められないよ」という声もあると思いますので,その場合は,”使ってもいいけど制限する“というルールを必ず設けて使うようにしましょう。(例:動画サービスを見てもいいけど、22:00〜23:00の間だけにする)
STEP2の実践にあたって大事なことは,“必須ではないテクノロジー”を削減して浮いたコスト(時間・費用など)で何をするのかを決めるということです。本書ではこのことを「質の高い余暇活動」と表現しており,これが次のSTEP3に大きな影響を与えます。
デジタル片づけを成功させるには,常時オンの光り輝くデジタル世界の外に,これは大事だと思えること,楽しいと思えることを再発見しなくてはならない。
デジタル・ミニマリスト, カル・ニューポート, P.93
これまでの習慣を変えるSTEP2は,最初の1〜2週間はどうしても辛い時期になりますが,乗り越えると辛い感覚が消える(著者の集団実験結果+私の体験)ので,ここが踏ん張りどころになります。
STEP3. テクノロジーの再導入
STEP2が無事に終わったら,おめでとうございます!
うまく実践できていれば,STEP2が終わった時点でテクノロジーの依存状態がかなり緩和されている状態だと思います。
その状態で今一度,30日間休止したテクノロジーのうち,どのテクノロジーを再導入するか考えましょう。
選考基準は以下のとおりです。
- 自分にとって大事なことを後押ししてくれる
- これを選ぶことが最善である
- いつどのようにそのテクノロジーを利用するか具体的に決めて、それを実践できる
一言でまとめると,「自分のやりたいことをアシストしてくれると確信できる最善のツールだけを使用する」になります。
これら基準を満たすテクノロジーを再導入することで,自分がテクノロジーをコントロールする側に回り,理想のデジタル・ライフを築くことができます。このSTEP3まで実践できれば,デジタル・ミニマリストに大きく前進したことになります。
このSTEP1〜3は,過去に導入したテクノロジーだけでなく”これから導入しようと思うテクノロジー”にも適用できるので,今後さらに出てくるであろう我々の注意力を奪うテクノロジーからも守ってくれる知恵になります。
おわりに
本書の中で紹介されていますが,「デジタル片づけ」を行った被験者たちは軒並み読書時間が増えたそうです。
私も「デジタル片づけ」を始めてから読書時間が大幅に増えましたし,何より家族と向き合う時間が増えました。(私の「デジタル片づけ」実践談は、随時書いていく予定です)
今回は本書の一部をご紹介しましたが,本書の中では具体的な体験談や例がたくさん取り上げられており,本記事で腹落ちできなかった部分も解消できると思いますので,興味が湧いた方はぜひ本書を手に取っていただければ幸です。(現在は文庫本も出版されています)
私もまだまだ道半ばではありますが,本書で学んだこと活かし,さらにデジタル・ミニマリズムを実践していきます。
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