私たちの生活に欠かせなくなったスマートフォン。
モバイル社会研究所が発表した調査・研究(2024-04-15)によると、2024年1月の時点で、携帯電話を所有している人のうち”97%はスマートフォンを使用している”そうです。
これだけスマートフォン(以下、スマホ)が普及した今日、「スマホ依存」という言葉ができるほど、スマホの魅力に取り憑かれ、”スマホ本来の利便性や携帯性を超えた誤った使い方”をする人が増えています。
そこで今回は、海外の論文などを参考にしつつ、間違ったスマホの使い方で失ってしまう大事なモノについて書きました。
時間

スマホを使っていて、XやInstagramの画面を永遠に下スクロールし、気づいたらとんでもない時間になっていたという経験はないでしょうか。これ、私は以前よくやっていました。
そんなとき、毎回「やってしまった・・・、二度とこんなことしないようにしよう。」と思うわけですが、これを私たちは何度も繰り返し、最も貴重な資源である”時間”を浪費してしまいます。
スイスのバーン大学によると、SNSの使用頻度が高いほど”先延ばし”を行うようになり、時間管理能力が低下することが示唆されています。
これは私たちが悪いわけでは決してなく、スマホやSNSが人の注意を奪うように作られているのだということをしっかりと理解したうえで、スマホに時間を奪われない取り組みをしていきましょう。

注意力と集中力

スマホを見ながら歩いていてぶつかりそうになった、スマホを見ながら歩いてる人を見て危ないと感じた、と感じた人は多いのではないでしょうか。もしかしたら、すでに誰かにぶつかったことがあるという方もいらっしゃるかもしれませんね。
スマホのコンテンツを見ると、画面に集中して視野がせまくなるため注意力が散漫になります。
テキサス大学で、大学生548人を対象とした研究によると、机にスマホを置く(視界に入る)・カバンやポケットに入れる(視界に入らない)の双方において、認知能力の低下が見られたそうです。
注意力と集中力を確保するために、自宅では”スマホは手の届かない範囲に置く”ようにしましょう。これは「スマホ脳」という書籍にも同様の記載がありました。

創造力

しっかりと時間を確保し、意識を今に集中することができなければ創造力を生むことはできません。
ウォータールー大学の研究ではスマホの使用時間が長い人ほど、情報に対しての分析・処理能力が低下することが分かっています。(SNSの使用時間との相関はないそうですが・・・)
また、ユタ大学とカンザス大学の研究によると、スマホなどのデジタルツールがない自然環境に身をおくことで創造力が上がることが確認されています。
スマホを持たずに散歩に出たり、サイクリングなどを楽しむことで創造力を取り戻し、スマホ以外の新しい愉しみ方を見つけませんか。
人間関係の質

スマホに触れてばかりいると、対面のコミュニケーション時間が減少し、人間関係の悪化につながる恐れがあります。
ミュンスター大学(ドイツ)の研究よると、ファビング(Phubbing:スマホを使用することで相手を無視する行為)によって、対人関係において信頼の喪失や、相手の孤独感や不安感が増加することが報告されています。
また、スマホ依存はカフェインやニコチンなどのように、その効果が切れると”離脱症状”が起き、スマホを触らないと、FOMO(Fear Of Missing Out:見逃す不安)と呼ばれるが生じ、うっかりミスが起こったり、イライラすることも多くなって対人関係に支障を及ぼすこともあります。
Memo: スマホ依存症は医学的な診断名ではありませんが、「ゲーム障害」は国際疾病として2018年に登録されています(最強にわかる依存症 P.84より)
身体的健康

これは考えればすぐ分かることですが、スマホの過剰使用は身体の負担が増えます。
韓国の大学生約300人を対象としたアンドン科学大学とサンムーン大学の研究では、スマホの使用が長い(特に4時間以上の使用)ほど首・肩・腰の痛みが生じるということが分かっています。
また、スマホを使用している間は基本的に身体が静止しているため、運動不足になり、肥満などの原因にもなるでしょう。
スマホから意識的に離れる時間を設けて、ストレッチや運動をする時間に充てましょう。
精神的健康

近年、過剰なスマホの使用による精神的な悪影響についての論文が多く発表されています。
イギリスのキングス・カレッジ・ロンドンとノッティンガム大学の研究によると、約42,000人を対象とした子どものうち、4人に1人はスマホの間違った使い方をしており、その子どもはうつ病や睡眠障害などの健康問題を抱える子が多かったと報告しています。
スマホだけでなく、依存症と呼ばれる症状は自尊心の低い人がなりがちだということが分かっています。
YoutubeやSNSなどで、他人の煌びやかな発信(あれはフィクションだと割り切りましょう)を見ることで自尊心の下げすぎないように注意しましょう。
脳への悪影響

近年の研究で、スマホが与える脳の影響に関する調査も進んでいます。
中国の研究で、スマホ依存とそうでない人約50名を対象に脳画像測定を行ったところ、スマホ依存群の人は、そうでない人と比べて脳の白質(神経伝達の重要な機能を担う部分)に損傷があったことを報告されています。また、スマホ依存群は睡眠時間が短く、睡眠の質も低いということが分かっています。
サンプル数が少ないため、これだけで決めつけることはできませんが、これからもスマホと脳に関する研究は進められていくでしょう。
お金

現代は「インターネット広告地獄」です。スクリーンにずっと触れていると、どこでそんな自分の個人情報が取られたのかと思うほど、機械が”自分が興味ありそうな商品・サービス”を勧めてきます。
ゲームの課金でお金が飛んでいく。私の子どもの友達が、親のクレジットカードで大量に課金をして怒られていたという話を聞いたことがあります。
イタリアのZ世代275名を対象にしたウディネ大学とロンドン大学の研究では、スマホ依存が高いほど、課金などのオンライン購買行動が衝動的になりやすいことが確認されています。
SNSやニュースサイトではどうしても広告が流れてくるので、スマホはアウトプット中心・必要な情報を得ることにのみ使いましょう。
おわりに
面白いことに、今回挙げた内容は「スマホを正しく使うこと」で逆に増やすこともできます。例えば、本や洋服をスマホ(ネット)で購入することによって本屋に行く手間(時間)を節約できますし、オンラインを通じて自分と同じ趣味のコミュニティに入ることで人間関係を深く築くこともできるでしょう。
いま一度、「自分が何のためにスマホを使用するのか?」を考えてみませんか。
もちろん、考える時はスマホを別室に置いておきましょう。
なお、ここで紹介した内容はあくまで「必要なこと以外でスマホを使用した時間」、いわゆる”浪費”が原因によるものです。
自分が求めている情報を取得することや、読書、アウトプットなどでスマホを使用すること自体を否定するものではありませんのでご注意ください。
Comments