突然ですが、あなたもこんな経験、ありませんか?
「ちょっとだけSNSをチェックしよう」と思ったのに、気づけば1時間、2時間があっという間に過ぎていた。
「今日のニュースだけ見よう」とスマホを手に取ったはずが、おすすめ動画を次々と見てしまい、夜更かししてしまった。
子どもが目の前にいるのに、スマホの画面ばかり見てしまい、会話が減ってしまった…。
僕もまさにそうです。エンジニアとしてデジタルにどっぷり浸かり、その後心理学を学んできた僕ですが、やはりスマホの誘惑には勝てない日があります。時間はあるはずなのに「忙しくて時間がない」と感じてしまうのは、まさにデジタルに時間を奪われているからだと痛感しています。
でも、デジタルは本当に「悪者」なのでしょうか?
実はそうではありません。デジタルは、私たちの生活を便利にし、目標達成をサポートする強力なツールにもなり得ます。ただ、その「使い方」を知らないだけかもしれません。
今日は、最新の研究から、デジタルが私たちの行動変容をどう助けてくれるのか、喘息治療という具体的な例を参考にしながら、一緒に考えていきましょう。
デジタルは「諸刃の剣」?最新研究が示すその可能性
僕たちが日々接するデジタルツールは、時に私たちを疲弊させ、大切な時間や集中力を奪ってしまいます。しかし、その一方で、私たちの健康や目標達成を力強くサポートしてくれる可能性も秘めています。
Bellらの研究チームが2026年に発表したシステマティックレビュー(Bell et al., 2026)では、薬剤師が主導するデジタル介入(オンライン通話やチャット、ビデオ提供など)が、喘息患者さんの「服薬遵守(指定されたルールを守って服薬すること)」と「喘息コントロール」にどのような影響を与えるかを、複数の論文を統合して評価したものです。
システマティックレビューというのは、信頼性の高い研究手法の一つで、たくさんの論文を体系的に集め、その結果を統合して分析するものです。この研究の結果は、僕たちがデジタルとどう付き合うべきか、大切なヒントを与えてくれます。
喘息治療に見るデジタル介入の力
この研究では、以下のような様々なデジタルツールが、喘息患者さんの治療に活用されていました。
- オンラインでのフォローアップや相談:
- 薬剤師が患者さんとオンラインで定期的にコミュニケーションを取り、服薬状況の確認や疑問点の解消を行っていました。
- この論文では、オンラインでの専門家との対話が、患者さんの行動変容に良い影響を与えたことが示唆されています。
- 教育ビデオ:
- 喘息の症状や吸入器の正しい使い方などを解説するビデオが提供されていました。
- 視覚的な情報は、テキストよりも直感的に理解しやすく、特に複雑な手技の習得には非常に有効です。
- セルフマネジメントアプリ:
- 患者さん自身が症状や服薬状況を記録し、教育コンテンツや他の患者さんとのチャット機能を通じて、自己管理をサポートするアプリです。
- データマイニングソフトウェア:
- 患者さんのデータから、リスクの高い患者さんを特定し、早期に介入を促すためのソフトウェアです。
研究に含まれた9つの論文のうち、服薬遵守を評価した5つの研究のうち4つで、デジタル介入が服薬遵守に良い影響を与えたと報告されています。また、喘息コントロールを評価した8つの介入のうち、7つで喘息コントロールの改善が見られました。さらに、患者さんの満足度も高いという結果も出ています。
これは、「デジタルツールが、私たちの行動を良い方向に変え、目標達成をサポートする強力な手段になり得る」という、非常に心強いメッセージだと考えられます。
ITの仕組みと心理学エビデンスの融合:なぜデジタルは行動を変えるのか?
なぜデジタルツールが、これほどまでに私たちの行動に良い影響を与えるのでしょうか?
この論文では、行動変容を促すために「行動変容テクニック(BCTs)」が活用されていることが指摘されています。BCTsとは、人々の行動を変えるための具体的な戦略や技術のことです。デジタルツールは、これらのBCTsを私たちの日常生活にスムーズに組み込むことができると考えられています。
例えば、
- リマインダー機能(BCTs: プロンプト/キュー):
- アプリが「薬を飲む時間ですよ」と通知したり、特定の行動を促すメッセージを表示したりします。これは心理学でいう「プロンプト(合図)」に当たります。
- 教育コンテンツ(BCTs: 知識の提供、自己効力感の向上):
- 教育ビデオやアプリ内の情報提供は、行動に必要な知識を増やし、自信(自己効力感)を高めます。「やり方が分かれば、自分にもできる」という感覚は、行動を起こす上で非常に重要です。
- オンライン相談(BCTs: 社会的サポート、フィードバック):
- 専門家とのオンラインでの対話は、疑問を解消し、適切なフィードバックを得る機会を提供します。また、誰かに見守られている、サポートされているという感覚は、行動を継続する上で大きな力になります。
このように、デジタルツールは、単に情報を表示するだけでなく、僕たちの認知プロセスや行動パターンに働きかけるように設計されています。
僕からのデジタル処方箋:賢くデジタルと付き合うための5つのステップ
さて、喘息治療の例から、正しく活用すればデジタルが僕たちの行動変容に有効であるとわかりました。ここからは、この知見を応用して、あなたがデジタルに振り回されることなく、自分の目標達成やより良い生活のためにデジタルを味方につけるための具体的な方法を考えていきましょう。
1. 目標設定とリマインダーを「戦略的に」活用する
「何をしたいのか分からない状態」から抜け出すには、まず「何をしたいか」を明確にすることが第一歩です。そして、その目標達成をサポートするためにデジタルツールを使いましょう。
- 具体的な目標設定: 「健康的な生活を送る」ではなく、「週に3回、30分ロードバイクに乗る」「毎日20ページ本を読む」のように、具体的で測定可能な目標を設定します。
- リマインダーの活用: 設定した目標を達成するための行動を促すリマインダーを、スマホやスマートウォッチに設定しましょう。論文で示されたBCTsの「プロンプト」です。
- 僕もロードバイクに乗る時間を確保するために、スマートウォッチのリマインダーを活用しています。決まった時間に通知が来ることで、「あ、そろそろ準備しなきゃ」と自然に行動に移れるんです。
- 習慣化アプリの導入: 習慣化をサポートするアプリ(例: Habitica, Streaksなど)は、目標達成へのモチベーションを維持するのに役立ちます。
デジタルタイマーやポモドーロタイマーも、集中力を高め、時間を区切って作業を進めるのに非常に有効です。
2. 学習と自己管理にはE-ink端末を味方につける
論文の教育ビデオが効果的だったように、情報を効率的に、そして目に優しく取り入れることは、学習や自己管理の継続に繋がります。
- E-ink端末の活用: 心理学的な観点からも認知負荷が低いとされるE-inkディスプレイの端末は、長時間の読書や学習に最適です。
- 僕も心理学の論文を読んだり、電子書籍で専門書を読む際には、Kindle PaperWhiteを愛用しています。目に優しく、集中して情報を取り込めるので、学習効率が格段に上がります。
- 紙の書籍も賢く併用: デジタルが優れている一方で、時には物理的な「紙の書籍」も非常に効果的です。特に深く思考したい時や、情報が複雑な場合は、紙に書き込みながら読むことで、より深い理解が得られます。
3. デジタルデトックスを「仕組み化」する
デジタルを賢く使う一方で、不必要な使用を減らすための「仕組み」を作ることも重要です。これは、デジタルミニマリストとしての僕が特に力を入れている部分です。
- タイムロッキングコンテナの活用: 強制的にスマホから離れる時間を作るために、タイムロッキングコンテナは非常に有効です。
- 僕は集中したい作業時間や、家族との大切な時間には、これを使って物理的にスマホから距離を置いています。最初は抵抗があるかもしれませんが、一度試してみると、驚くほど集中力が持続し、家族との会話も増えることを実感できますよ。
- 通知のオフ設定: 不要なアプリの通知は、集中力を途切れさせる最大の原因です。本当に必要なもの以外は、通知をオフに設定しましょう。
4. 質の高い情報源を選ぶ習慣をつける
僕たちがデジタルに振り回される大きな理由の一つに、質の低い情報やエンターテイメントコンテンツに時間を奪われることがあります。
- 情報源の厳選: ブログやPodcastで発信する際も、僕は必ず論文や国・政府が発表している公的な資料を根拠にしています。これは、誤った情報に振り回されないためにも非常に重要です。
- 「消費」から「生産」へ: ただ動画を眺める「消費」の時間だけでなく、自分の学びやアウトプットに繋がる「生産」の時間にデジタルを使う意識を持つことが大切です。
まとめ:デジタルは敵ではない、賢く使えば味方になる
今日の記事では、薬剤師主導のデジタル介入が喘息治療に良い影響を与えたという最新の研究(Bell et al., 2026)を参考に、デジタルが僕たちの行動変容にいかに有効であるかを見てきました。
デジタルは決して「悪者」ではありません。使い方次第で、僕たちの目標達成や健康管理の強力な味方になるんです。重要なのは、漫然とデジタルに触れるのではなく、自分の意思で「どう使うか」を選択すること。そして、その選択を心理学的な知見から理解した上で、より効果的なものにすることです。
僕もまだ道半ばです。ついついスマホを見てしまう日もありますし、子どもとの時間をもう少し増やしたいと常に考えています。でも、こうして最新の研究から学び、自分の経験と重ね合わせながら、少しずつデジタルとの付き合い方を変えていこうと努力しています。
📚 参考文献
- タイトル: Impact of pharmacist-led digital interventions on asthma outcomes: A systematic review.
- 著者: Bell Michaela, Burns Brianne, King Amber, Eller Amy, Jeminiwa Ruth
- 掲載誌/ソース: PubMed
- 公開日: 2026-Feb-20
- DOI/URL: https://doi.org/10.1016/j.japh.2026.103054
- 査読: あり



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